真船勝博(EGO-WRAPPIN’、FLOWER FLOWER) / セッションベーシストでありつつも、バンドマン・アーティストとしても活躍する、広い視野からの音楽・プレイヤー史。

2019年5月31日


 
今年デビュー20周年を迎えたEGO-WRAPPIN’、シンガーソングライターのYUI(現yui)がきっかけとなり始動した4人組ロックバンド・FLOWER FLOWER、他には類を見ない歴史縛りファンクネスバンド・レキシ(レキシネーム:パーマネント奉行)、日本を代表する男性ボーカルユニット・CHEMISTRYなど、ジャンルを飛び越えて活躍中のベーシストである真船勝博。

数多くのスタジオ作品やライブに参加している彼だが、自身や携わるバンドについて語られた媒体は意外と多くない。今回は音楽性の成り立ちから機材セレクトのポイントはもちろん、EGO-WRAPPIN’やFLOWER FLOWERへの参加する際のエピソード、そして今後の展望についてまでたっぷりと語っていただいた。

取材 / 立﨑隆宏(グランディベース東京
 
 
 

「いいよ、おれ 絶対ベースだから」



 
― では、まず楽器をはじめたきっかけを教えていただけますか。
 

真船勝博(以下、真船):高校一年生の時に、「バンド組もうぜ」って友達に言われたんです。普通なら、ギターをやりたいとか、ボーカルをやりたいってなるんですけど、ぼくは「絶対ベース」って思ってたんです。

小さいころに姉貴がピアノを習っていて、ベートーヴェンとか弾いていたんです。ベートーヴェンの『ピアノソナタ(第14番)』の『月光』や、『エリーゼのために』ってよく聴くとベースラインありきの曲というか。その曲ばっかり演奏しているから、すごく耳に残っていて。

あとは僕らの年代だとファミコンが子供の時に出てきて。いわゆるメロディラインとカウンターラインと、あとベースライン、それとドラムの打ち込みがある8ビットサウンド。どの曲でもベースラインが拘って作られてるというか、耳につくんですよね。ベタなやつだと『スーパーマリオ(シリーズ)』の土管の面とか。ゲーム音楽ってプログレですよね 笑。変拍子とかガンガン使ってるし、テンポも速いし。そういう環境で自然とベースラインが耳に入ってたんです。
 

― 分かりやすいベースヒーローがいてスタイル的な憧れというより、音楽的にベースが良かった場所から入っているんですね。
 

真船:そうですね、環境的に。『夜のヒットスタジオ』とかの音楽番組でアイドルの人たちが出てると、アイドルの楽曲のベースラインがすごく目立つんですよね。チョッパーバリバリだったりして。あとは、アニメもよく見てたんですけど、『ミスター味っ子』(※)っていう作品のエンディング(『心のPhotograph』)がすごくカッコよくて(曲を流し始める)。

(※)ミスター味っ子・・・寺沢大介による日本の漫画作品。テレビ東京系で1987~89年にテレビアニメ化された。音楽は藤田大土、オープニング&エンディング歌唱は国安わたる。
 

― 完全にAORですね 笑。
 

真船:スラップ、というかチョッパーなんですけど、「何かこの音めっちゃカッコいいな」って。こういうのを聴いてると、やっぱりこういう音色が好きみたいで。あとは、良くゲームセンターに行っていたんですけど、当時はSEGAの体感ゲームっていう大きな筐体に乗り込んで遊ぶ、車や飛行機、ヘリコプターのゲームがあったんですけど、当時はSEGAの音楽チームが最先端を行ってて。ギターのディストーションや、ベースのスラップ音を一音一音サンプリングしていて。当時のSEGAのゲームってメロディは無くて、ドラム、ベース、シンセの和音だけで構築されていたり。ベースがめちゃくちゃカッコいいんですよ。なぜかベースソロまであるっていう 笑。そういった幼少期の体験ってすごく大きかったんです。ベースヒーローっていうんじゃなくて、当時自分がいた環境から流れてくる「何か分からないけどカッコいい音」がベースライン、ベースっていう楽器だったんですよね。もし楽器をやるんだったらベースをやりたいって漠然と思っていた高校一年生の時に、「バンドやろうぜ」って言われて、真っ先に「おれベースやる」って言って。「えー!?」「いいよ、おれ絶対ベースだから」って。
 

― その時点では部活等でウッドベースをやっていたわけではないんですね。
 

真船:楽器はエレキベースが初めてですね。
 

― 生粋のベーシストですね。初めて買ったベースって覚えていますか?
 

真船:ヤマハのATTITUDE 75Mっていう、ビリー・シーン(Mr.Big)モデルの廉価版ですね。Mr.Bigもよく聴いてたんで。
 

― ちなみに、高校一年生の時に組んだバンドでやっていた楽曲って何だったんですか?
 

真船:Mr.Bigもやってたし、エクストリーム、X(JAPAN)、BOØWY、プリプリ(プリンセスプリンセス)・・・その時に流行ってた曲をやってましたね。いわゆるロック系をやるっていう感じで。当時のベースマガジンってすごくマニアックな内容で、今読んでも分からないような記事もあるんですけど、バイブルとしては本当によくできてて。例えば、ファンクを辿っていくという特集なら、ヒストリー分けがすごくしっかりされていたんです。チョッパーが好きでファンクを辿るとラリー・グラハムに行き着くんですけど。自分が好む音楽を辿っていくと、普段のロックでやっていることも好きだけど、ファンクやソウルも好きだなって気づいて。普段聴く曲はバンドでやる用を聴きつつも、タワー・オブ・パワーとかラリー・グラハム、インコグニート等を聴いたりしていましたね。なので誰も話が通じない 笑。

その後、大学に行くんですけど、浪人してた時に新聞を読んだら、当時行きたかった大学の、ビッグバンド・ジャズの広告が載ってたんですね。こういう活動をやってます、こういう賞を獲りましたっていうことが書いてあって。当時聴いていたファンクミュージックやタワー・オブ・パワー等はすごくブラスが効いてるんで、ブラスが効いたバンドがやりたいっていうのが漠然とあったんです。じゃあロックサークルに入るよりは、このジャズ研がある大学に入れば、こういうブラスのホーンセクションの人たちとそういうバンドができるんじゃないかと思って。入ってなかったらここにいないかも 笑。本当にそこで方向付けられたというか、そのジャズ研の部長がEGO-WRAPPIN’のサックス(武嶋聡)なんです。当時のEGO-WRAPPIN’のベースの後藤さんが「カレー屋が忙しくなりすぎて、おれ辞める」って言って。今、大阪で「カシミール」っていうカレー屋さんをやってるんですけど、超有名店なので機会があったら食べていただきたいです。
 

― EGO-WRAPPIN’は皆さんが同じサークルバンドだったっていうわけではなくて、その中に武嶋さんがいたということなんですね。
 

真船:そうですね。誘われてちょっとセッションしてみて、感触が良さ気だったみたいで「そのまま弾いてくれへん?」って誘われて弾くことになったんです。
 

― EGO-WRAPPIN’って不思議なんですけど、真船さんってポジションは・・・実質メンバーですよね?
 

真船:EGO-WRAPPIN’っていう名前だと、2人(中納良恵、森雅樹)を指すんですけど、 & THE GOSSIP OF JAXXがつくと今のライブのメンバーがバンドメンバーという形態になりますね。やっている内容は他のバンドと変わらず、2人が「こういう曲ができたから聴いてくれへん?」って言って、僕らの前で弾いて、「こういう感じの曲にしたいんやけど」っていう話をリーダーから振られて、この曲はswingジャズっぽい、この曲はボサノヴァだけど少しスモーキーな要素があるというイメージをみんなで膨らませながら、セッションしながらアレンジを煮詰めていくっていう形をやってましたね。ライブに関しても、その場でどんどんアレンジを作っていってっていう。立ち位置はサポートメンバーという形なんですけど、やっている内容は(通常の)バンドと変わりないし、他のアーティストさんと演奏するにしてもその場で音を出しながらアレンジを作っていくっていうのは、個人的にはもはやバンドでしかないというか。与えられた事だけを弾くのではなく。ステージングとかも含めてなんですけど。その時にEGO-WRAPPIN’に出会って、一緒に楽曲アレンジする、ライブアレンジを皆んなで練るっていう作業が、今のポジションを作るのにすごく役立ちましたね。
 


 

― では、EGO-WRAPPIN’のサポートメンバー・・・実質メンバーになったのは、大学在学中だったんですね。
 

真船:そうですね。その時は就職するのかどうしようかすごく悩んでた・・・というかほぼ授業受けずに部室ばっかり入り浸ってたんですけど 笑。部室に入り浸りながら、バイトもしながら、夜はキャバレーのハコバンとかやったりしていて。空いている時間は梅田とかでストリート(ライブ)をやって、その日の小遣いを稼ぐみたいな 笑。
 

― EGO-WRAPPIN’はブレイクした時にすごく突然変異に見えたんですね。EGO-WRAPPIN’のようなジャンルがヒットチャートに入ってくるのは衝撃で。掴めない、顔もはっきりと見えない、「この人たちは何なんだろう」という雰囲気がありましたし。あのようなジャズやロカビリー、ボサノヴァっぽい雰囲気は、メンバーの皆さんのルーツから出てきたものなんですか?
 

真船:そうですね。ジャズっぽい要素は、僕もですが、サックス(武嶋聡)も鍵盤(ハタヤテツヤ)もジャズ屋さんなので、ジャズのハーモニーやリズムだったりは得意だったんですけど。面白いのはドラム(末房央)がハードロック・バンドの人で、ジャズのレガートじゃなくてどこかしらロックっぽいニュアンスが出る人で。そのあたりが当時のEGO-WRAPPIN’のサウンドに影響を与えてたのかなって思います。普通にジャズ屋さんが叩いてたらここまで印象に残るサウンドにならなかったんじゃないかなって。

あの2人のすごいところは、ジャズだけを聴いていればいいとかではなく、自分たちが良いと思った楽曲やアーティストを何でも聴くんです。それも本当にセンス良くて。「マフちゃん、こういうの聴いた方がいいよ」ってすごく薦めてくれて。そういうレコメンドが無いと、僕は好きだったファンクやフュージョンとかジャズとかばかりしか聴かなかったんで、すごくありがたいですね。
 

― その頃はもう東京に出てきていたんですか?
 

真船:EGO-WRAPPIN’を始めた当初は出てきてなくて、26歳の時に出てきたんです。他のメンバーは3年前くらいには出てきていて、僕だけはまだウジウジしてて 笑。大学を卒業するのか将来どうするのか悩んでいて、でも「音楽で頑張ろう」って思ったのが26歳の時で。
 

― でもその頃はもうEGO-WRAPPIN’はブレイクしてましたよね?笑
 

真船:してましたね 笑。
 

― その頃はプロとしての活動はEGO-WRAPPIN’しかしていなかったんですね。
 

真船:そうですね。だから東京に出て行ったからといって、食べられるか分からないし、親からは何してんだっていう感じで怒られるし 笑。

大阪のいいところは、セッションできる機会がすごく多いというか、飛び込みのライブもできるし。高槻でやっているジャズフェス(高槻ジャズストリート)(※)が本当にすごくて。タダであのクオリティが観れて、ミュージシャンもチャージバックではなく投げ銭なので、もう良い演奏をするしかないっていう。自分たちが演奏したことの対価を平等な形で得られるっていうシステムで。地域に根付いてますし、最近は東京から演奏しに行くミュージシャンも多いですね。関西の一流ミュージシャンがその場に集まって、お互いのプレイに刺激を受け合うっていうのは結構大きいことで。

(※)高槻ジャズストリート・・・毎年ゴールデンウィークの2日間に、大阪府高槻市の複数会場で開催される無料音楽イベント。観客は毎年10万人以上を集める。
 

― 26歳で上京して、そこから・・・
 

真船:苦難の歴史が 笑。
 

― いやいや 笑。
 

真船:でも当時は、EGO-WRAPPIN’で出てきたんで、ウッドベースのイメージがすごく強かったんです。でも僕はエレキベースから始めていたので、「ぼくエレキ弾けますよ」アピールはするんですけど 笑、なかなか届かず。はじめはウッドベースの仕事ばかりやってましたね。ウッドサウンドが必要なポップスだったり、ジャズっぽいテイストを必要とするアーティストさんに呼ばれたりとか。
 

― 今となってはそれは武器ですよね。弾いてって言われてすぐ弾けるっていうのは。その頃から今に至るまで続いている仕事ってありますか?
 

真船:CHEMISTRYとかは続いてますね。活動休止する前からですね。今も変わらないですが色んな現場で知り合ったミュージシャンやプロデューサーの紹介で現場に呼んでいただいて、最善を尽くして、それが良ければまた続いていくという。最善を尽くしたけど良くなければ呼ばれないというのも散々経験しましたし。上手くいっているイメージは持たれているかもしれないですけど、それ以上に蹴落とされた歴史もいっぱいあるんで。成功例だけを語るのは楽といえば楽ですけど・・・こういう人がこういう現場に繋げてくれてというのは言いやすいですけど。逆に、「また呼ぶね」って言われて呼ばれなかった時に「あ、違うベースの人になってる」っていう時の悔しさというか。でも悔しいって思った時に、逆にそれをプラスに転じる方法はないのかっていうのは昔からすごく考えていて。それは音楽をやる以前の問題で、日常生活で嫌なことがあった時に自分はどう対処するのかとか、マイナスをいかにプラスに持っていくかってすごくしんどいですけど、そういったことを考えるのが好きで。

EGO-WRAPPIN’をずっとやってて、(前に立つ)アーティストがいて、バックバンドがいてという関係性は今でも違うなと思っていて。ステージに立ってしまえば(一つの)バンドみたいなイメージなんです。それはEGO-WRAPPIN’に限らず、どこでもそうやってるんで。そのスタンスでいると、いざとなって出るところは出れるし、この人がかっこいい事弾いているから自分は一歩引こうとか、そういうのができるんですよね。EGO-WRAPPIN’をやっていることで足し算だけではなく引き算もできるようになったので、それは結構デカいかなと。

自分自分ってなるのではなく、自分以外の人との関係性があっての音楽だと思うので。単純に楽器をすごく練習したからとかではなく、日常の人間活動がそのまま音楽に繋がると思ってます。良く遊び、良く学ぶ 笑。興味ない事も億劫ながらも触れてみるとか。あとは当たり前ですが挨拶とか感謝ですかね。ただ、練習は絶対に嘘はつかない・・・的を外れた練習は嘘をつくかもしれませんが。自分の得意なジャンルばかりを聴くんじゃなくて、聴かない音楽も聴いて吸収したり。吸収できなくてもそれはそれで経験にはなるので。
 

― そういった20代後半から様々な現場を経て、FLOWER FLOWERが始まるのですが。
 

真船:そうですね。バンドとして対外的に出たのはもう5~6年ちょっとなんで、34?35歳くらいですね。
 
 
 
 

「一 ベーシスト」っていうスタンスでやっているので、 “要望に対して応えたい”というのがすごく強いんです。



 
真船:ぼくがyuiと出会ったのは、7年くらい前の「GREENROOM FESTIVAL」で。ぼくはEGO-WRAPPIN’とキマグレンで出演していて、ライブが終わって帰ろうとしたら、「真船さん、紹介したい人がいます」ってキマグレンの制作の人が声を掛けてくださって。「紹介します、YUIさんです」って言われて、でもパっと見であのYUIさんいうイメージが沸かなくて。「綺麗な人だな」という 笑。「すごいよかったです」みたいに言ってくれたんですけど、本当に急いでいて「ありがとうございます。じゃあちょっと(仕事で)次へ」みたいなひどい対応をしてしまって 笑。そして何もなく一年後くらいに、『歌を歌ってるYUIと申します』っていうメールが届きまして。『以前ライブで演奏されているのを見ました。』と、本人から。でもぼくは一年前にご挨拶したYUIさんは覚えているけど、そのYUIさんとは違うYUIさんかもと思い、連絡してやり取りをさせていただいて「どちらのYUIさんですか?」と 笑。『昨年お会いして・・・』「あ、CHE.R.RYの・・・」『そうです』と。それが最初で、他のメンバーは一切知らなくて。『●月●日 ●●●のスタジオを予約しましたので来てください』と。
 

― 仕事仲間や気が合う仲間同士で始めたわけではないんですね。
 

真船:そうではなく。yuiが自分でいいなと思った人を見つけていったということで。ドラムのsacchan(=佐治宣英)は、ソロの「YUI」時代から何曲かレコーディングでは叩いてたみたいですけど。ぼくはテレビで見て「バックバンドでサポートできたらいいな」と密かに思ってましたが 笑。
 

― 仕事の繋がりなどで選択肢は非常に多くあった中で、会ったことのない人でも「この人と一緒にバンドをやりたい」と思った人に、自分で声を掛けていったのはすごいですね。
 

真船:でも、「マネージャーの人にEGO-WRAPPIN’の(ベースの)人に声を掛けたいんです」って言ったら、「たぶん合わないと思うよ」って言われたらしくて 笑。今でこそ笑える話ですけど。ドラムもキーボード(mura☆jun=村山☆潤)の二人ともスタジオで「初めまして」「どうやって呼ばれたんですか」みたいな 笑。

そうこうしてスタジオで音出している中で速攻1曲できちゃったんです。mura☆junがコードを弾き始めて綺麗な進行だなと思ってベースラインを弾いて、ドラムが入ってきて、そうしたらyuiも即興でメロディをつけて、すぐ一曲できて「これ凄くいい曲だねー」って話になって。なかなかセッションで曲を作るっていうのは行き詰まり易いんですけど、でもメロディラインを一瞬で乗せられるってのは、「yui、すごいな!」って。
 

― そもそも、FLOWER FLOWERは「バンドでやろう」という話だったんですか?サポートでということではなくて。
 

真船:「バンドでやりたい」ということでした。「こういうバンド名があって」って。
 


 

― なるほど。もう、それはメンバーを選んだ時点で勝ってますね。今年、ライブを拝見させていただいたですが、バランスがすごく良くて。バンドマンの知り合いと一緒だったんですが、「これは憧れるよ、こういうのやりたくなるよ、バンドマンだったら」って言ってまして 笑。バンドマンの欲を満たすところの、マニアックな部分もちゃんとありながら、曲ありきで良い意味でのポップスでちゃんとやれているバランスのことを言っているんだと思うんですけど。お客さんを突き放すということも・・・
 

真船:突き放す時は突き放すんですけど 笑。まぁそれを良しとできる、yuiちゃんの包容力というか存在というか。「yuiが歌えば、もう全てがオッケー」みたいな。

バンドに関して言えば、「休みの時間」もすごく大事だったと個人的に思ってるんです。活動休止を経て昨年から今年一年間バンドとしてしっかり動いていて、ファンの皆さんから見れば「もっと動くのかな」と思われているかと。ただ僕ら的には、コンスタントに活動できない時期を乗り越えて、この一年間ライブやツアーができているのは奇跡に近いんです。お客さんからすれば関係ないことかもしれないんですけど、ぼくらにとってはそれはすごく大事なことで。頑張る時は頑張るけど、頑張らない時は頑張らないみたいな。オンとオフをしっかり。でもオフが続くとやきもきしてしまうと思うので、できるだけオフの期間でも何かしらリリースできたらという話もあったり。できるだけ彼女に負担が無いように活動していければと思っています。今の音楽業界、割とサイクルというのが決まっていて。リリース、はいツアー、ツアーの間に制作、次は・・・と仕方ないのですが 笑。
 

― EGO-WRAPPIN’もそのサイクルからは良い意味で外れている気がしますね。それがバンドを長生き、新鮮なままで生かせている要因の一つなのかなって思うんです。
 

真船:休みのように見えて何かしらスタッフであったりメンバーであったり、バンドは動いていて。「動いている=人前に出ている」という風になるとちょっと違うかなと。人前に出ているというのが世間的に動いているとすると、どこかで種を蒔かないことには動いていかないですよね。種を蒔くというのはすごく大事な作業で。今はもう、種をどんどん蒔いていく時期なので、水をあげて肥料をあげて、大きく育てて、収穫して。収穫した時にまた大きくボンっといろいろできたらいいなって考えてます。こう見えて(?)みんな頑張りすぎるところがあって 笑。特に彼女は、一人でずっと頑張ってきたところもあるので、ついつい一人で頑張ろうってなってしまう。うちらに任せてくれたらいいのになって思うところもあるんですけど。そういう意味で、気楽でいいところは気楽でいいよって言えるような感じにはどんどんしていきたいですね。

単純に自分たちの音楽がこうやって広まっていくのは嬉しくて。他のアーティストのバックで弾いている感じとはまた違って、やっぱり自分たちが苦労して作った曲が広まって、ライブをやることでコール&レスポンスでさらに曲が成長していく様を見ると、やっぱりバンドって楽しいなって。
 

― 今活動されている内容は、EGO-WRAPPIN’があって、FLOWER FLOWER、そしてレギュラー的なサポートや単発で受けられる仕事があると思うんですけど、各活動において意識が違う部分ってありますか?最初のEGO-WRAPPIN’の時点で変わらないと仰ってましたが。
 

真船:変わらないですね。結局、自分が弾くんで。自分のメンタルというか、音楽に対する姿勢は、どのアーティストでも変わらないですね。今までやってきたというある種の自信はあるので、これをしっかりやり遂げる、そこでしかないかなと思います。

最終的にはディレクションを受けながら弾いていく事が多いのですが、まず最初は「自分はこう思うんです」って弾くんですけど。もちろんクライアントの理想もあるので、「とりあえず、こんな感じになりましたけどどうですか」って伝えて、じゃあここはメロディに寄り添う形で、ここはもう少しシンプルでとかやりとりを経て。結局大事なのは、人からこうしてほしいと言われた時に、どうやって対応できるか、で。全く対応できないと、この人は次回は呼べないかなってなってしまう 笑。対応力というか引き出しはいっぱいあると、「この人はこっちの引き出しのことを言ってるのかな」みたいに考えられるので、その引き出しを出して弾いたら「それです!」ってなることも多くて。さっきの話に繋がるんですけど、良い音楽をたくさん聴くというのは、引き出しを増やすということでもあって。

自分はアーティストとは思ってなくて、「一 ベーシスト」っていうスタンスでやっているので、要望に対して応えたいというのがすごく強いんですよね。でも「ここは絶対こっちの方がカッコいいですよ」っていう時は言葉で説明するとアレなんで、プレイで納得してもらうという感じです。
 

― なるほど。職人ですね。現在、それぞれで使用されているメインの機材って決まっていますか?
 

真船:昔の人だと、「おれはこれしか使わない」とかって聞くんですけど、そういう人に限ってベースは何本も持ってたりとかするので 笑。ぼくもこの一本だけあればいいって言いたいんですけど、意外と無くて。今でも使うのは5弦は20歳くらいの時にサウンドトレード(※)でオーダーして作ってもらった一本です。その後、上京してからメーカーの方から「真船さんモデルを作らせてください」と仰っていただいたのが青色の4弦です。ぼくはエンドースとかは遠慮しているんですけどとお伝えしたら「いや、個人的に作りたいんです」と。作っていただいたらすごく良くて。あとは、昨年フェンダーの64年製ジャズベを手に入れました。それと、ジャズベで艶っぽい音色が必要ということになったら、アレバ・コッポロを使います。なのでその4本ですね。←プレベのくだりに移動します。

(※)サウンドトレード・・・大阪市に拠点を構えるベース修理販売専門店「SYSTEMCRAFT」が展開する、セミオーダー・ブランド。

EGO-WRAPPIN’とか他の現場でもそうなんですけど、4弦だけでいけそうだっていう時はわりとフェンダーの62年製プレベを使うことも多いです。プレベってピックアップ1つしかないので、不器用な楽器でもあるんですけど、弾きこなすとすごく楽しいんですね。なのでメインはその5本ですね。
 

― コントラバスの感覚に近いのはプレベだと思うんです。ジャズベだと整っているので「エレキベース」っていう感じなので。
 

真船:すごく分かります。やはり暴れっぷりが好きというか。弱く弾いても存在感が出るし。現在みたいにデジタル製品が宅録やPA、レコーディングで主流になってしまうと、ベースの立ち位置って結構難しくて。例えば、全帯域どんっと出て倍音が綺麗に整っていてっていう楽器は単品で弾くと気持ちいいんですけど、オケの中に入ると不思議と埋もれやすいんですよね。もちろん埋もれない楽器や他の楽器との兼ね合いなどもあるんですけど。受け側がどの帯域でも受けられるシステムになっているので、ベーシスト的には自分のプレイスタイルに合った帯域がしっかり出る楽器の方が、自分の音をちゃんと出せるんじゃないかって思うんです。
 

― ヴィンテージが今でも良いと言われる理由はそこでしょうね。
 

真船:そうですね。オケに入るととたんに楽しい楽器になるというか。化けるんですよね。
 

― それはプレイヤーとしてのスタンスに近いものがあるんでしょうね。
 

真船:自分の伝えたいものが伝えられる楽器というと、今挙げた楽器が残りますね。個人的にはシンベ(シンセベース)もすごく好きで。エレベでは勝てないあのロー感というのがあるんですよね。シンベにエレキで勝つ為にはどうすればいいかとか結構悩んだんですけど、悩んでいる内に「もうシンベで弾けばいいや」ってなって 笑。結局、シンベの曲はシンベで弾く方が楽しいって思います。もちろんシンベのニュアンスに近づける奏法とかセッティングとか研究したので、そういうニュアンスも出せるんですけど、ローBの質感とか、4弦開放のEと同じ音を出しても違うんですよね。シンベって説得力があるんですよね。
 

― わりと若いベーシストだと、ベースだからローを出さないと迫力が出ないんじゃないかって思ってローを出したがるんですけど、客席には伝わらないんですよね。
 

真船:PAさん的には「そんな低いところは・・・」って 笑。ぼくもライブのサウンドチェックでPAさんと相談しながら音作りとかしていくんですけど、だいたい10分くらい時間を掛けて4弦のEから10秒くらい鳴らして、次はFを10秒、F#を10秒っていう感じで、どの帯域が膨らむか会場によって違うじゃないですか。逆にどこかの帯域が凹んでるとか探りながら、3弦の2フレット・Bの音だけが他の音に比べて前に飛び出してるってぼくが感じたならそれをエンジニアの人に伝えて、「ここってハコ的にどうですか」「ちょっと飛び出てるかも」「じゃあそこをちょっとカットしていただいて」というやりとりをして。ベースラインの表音(外音)をお客さんにしっかり伝える為には、ちょっとでも凸凹を減らして、ベースとして一番オイシイ帯域を聴かせる為に不必要なところは削っていく作業を時間を掛けて丁寧に行いますね。他の人のライブを観て、この曲のベースのここの部分だけがぶわーっと前に出てるみたいな違和感って、聴いているお客さんにも違和感だったらまだいいんですけど気持ち悪いみたいな伝わり方だったら嫌だなというのがあって。そういうところが無ければ本来はベースラインってちゃんと聴こえるものなんですよね。切りすぎず、出しすぎず、できるだけフラットに近づければ。
 

― 大きくすれば聴こえるわけではないですからね。
 

真船:そうなんですよね。こっち(ステージ上)で低音が物足りないからローをがっつり上げるというわけではなく。結局、自分が気持ちいい音と会場に伝わる音は絶対に違うので、できる限りその差を無くすという。ってなってくるとあまりプリアンプ上でEQとかしたくなくなってくるんです。そうなるとそもそもの竿(ベース)がいい感じに倍音が鳴ってくれて、っていう話になってくるので。
 

― ちなみにアンプって何を使っていらっしゃいますか?
 

真船:アンプヘッドはマークベースのEVO1で、キャビネットはバグエンドか、最近はbarefacedっていうイギリスのメーカーなんですけど、それが最近好きで使ってます。ウッドベースも使う現場が多いので、1つのキャビで鳴らしたいという願望があって。ウッドベースとエレキで分けてキャビも2台必要ってことになると、狭いステージだと置き方も困るので。あと単純にベースの低音成分は振動として床など伝わってステージ全体に悪影響を与えがちなんで 笑、できるだけベースの鳴る出所は一箇所にしたいんです。ウッドとエレキを持ち替えた時のステージ上の振動や低音のトラブルを減らしたいのでキャビは1つにして、じゃあキャビ1つで(エレキとウッドベース両方を)鳴らす為には、ヘッドが2チャンネルインプットできるやつってなってくると、昔はウォルターウッズを使ってたんですけど個人的にはちょっと硬くて好みでなくなってきたので、そういう中でマークベースが出たんです。好きなアンペグの質感がちゃんと再現されていて、いわゆるベースアンプのオイシイところがちゃんと出るんで。
 

― そうですね、マークベースはアンペグのオイシイ解釈っていう感じが全体的にありますね。ここまで真船さんのヒストリーから音への拘り、機材周りまで伺ってきたんですが、今後ベーシストとして目指すところを教えていただければと思います。
 

真船:そうですね。最近は曲を作るのが好きなので、ソロ名義というわけではないんですが、自分が好きなミュージシャンやアーティストを呼んで、アルバムは作りたいと思いますね。それが個人名義のリーダーセッションなのか、自分主導のバンドを組むのか、それかソロだけど「真船勝博」とは違った名前でのプロジェクトなんかもやってみたいなって思いますね。今流行っているものをソロで作るよりは、、自分が通ってきた音楽なんかをパッケージするというのも大事な作業なのかなって思います。仲良くやってきた仲間と楽しく音を出してアルバムを作れたらって。
 

― 20代のころの真船さんがソロアルバムを作っていたら、すごくジャズに寄っていたりしたのかもしれないですが、いろんなジャンルを経ている今ですから、それはすごく楽しみですね。
 

真船:最初に聴いていたゲームミュージックとか 笑。「そっちなんですか!?」ってなるかもしれないですし。でも、自分を掘り下げる作業としてはやりたいなって思います。単純にベースはすごく好きなんですけど、音楽をもっと自由に楽しみたいっていうのがそもそもあって。自分がやりたい事、好きなことを表現しているアーティストと一緒にやる機会があれば最高ですが、自分でやってどんどん動いていった方が楽しいよね、って最近は思うので。
 

― とても期待しています!本日はありがとうございました!
 

真船:ありがとうございました!
 
 

真船勝博(まふねかつひろ)


2月1日大阪生まれ。高校1年の春、エレキギター等に全く見向きもせずエレキベースを始める。

大学入学後JAZZ研に入部しウッドベースも始める。在学中はジャズだけでなくファンクやソウル・フュージョン・ポップス等のバンドを多々掛け持ちしつつ、2000年より「EGO-WRAPPIN’」のサポートを始める。

現在は「EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXX」、yui 率いる「FLOWER FLOWER」、トリオ編成のポエトリージャズロックバンド「F.I.B JOURNAL」の活動を中心に、様々なアーティストのライブやレコーディングに参加している。
 
真船勝博 Official Site : http://www.katsuhiromafune.com/
真船勝博 Official Blog : http://blog.katsuhiromafune.com/
真船勝博 Official Twitter : https://twitter.com/mafumafu_bass
真船勝博 Official Instagram : https://www.instagram.com/mafu_mafune/

EGO-WRAPPIN’ Official Site : http://www.egowrappin.com/
FLOWER FLOWER Official Site : http://www.flowerflower-net.jp/
F.I.B JOURNAL Official Site : http://fib-journal.net/
 

2019年6月29日(土)、「GRANDEY BASS TOKYO Presents Bass Meeting」に真船勝博さんが初登場!真船さんの演奏やサウンドをイケベならではの視点で掘り下げます。barefacedキャビネットやORBケーブル等、普段から愛用中の機材を用いての実際の演奏も!チケットご購入は上記画像をクリック!

 

 

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