BOH / 「6弦ベーシスト」としての歩みと拘り、そして音楽に対する姿勢。

2018年12月8日

 
「日本でも数少ない6弦ベースをメインに操るベーシスト」という肩書きの通り、BOHのプレイはローポジションからハイポジションまでを縦横無尽に駆け回るフレージングについ目を奪われる。しかし、その出で立ちも含め目立つスタイルながらも、歌とバンド全体のサウンド、そして会場内のサウンドにおいて綿密に練られたプレイスタイルに、目立たない本当の技術力の高さを垣間見れるのがBOHフレージングの真骨頂でもある。

自身のバンド活動をはじめ、ジャンルも形態も様々な案件に携わるサポート・ミュージシャンとして活躍する中で築き上げた「自分の音」の成り立ちと、その拘りについて存分に語ってもらった。

取材 / 坂本浩明(ベースハウスイケベ池袋
 
 
 

自分がどういう音を作っていけば周りのサウンドを引き立たせたりできるのかっていうことを考えると、ブレる隙が無くなる。



 
― まず、ベースクリニック内にて発表しました、「ATELIER Z IKEBE ORIGINAL Beta6 / 32”」についての感想をお聞かせいただけますか。
 

BOH:できあがった時から何度か弾かせていただいているんですが、普通は32インチスケールで音を出すと、軽い音になってしまいそうなイメージを持っていたんです。けれど、このモデルは現場でも使用できるほどにしっかりとしていて、奇をてらわないオーソドックスな音色の仕立てになっているなという印象ですね。
 

― 開発にもBOHさんは携わっていらっしゃるのですが、特に拘った点はありますか?
 

BOH:僕は19歳の頃からアトリエZにお世話になっているんですけど、その時に初めてオーダーしたベースに、今と全く同じEMGのピックアップが乗っていたんですね。もともと使っていた4弦ベースがPHのフェンダー・アメリカン・デラックスだったんですけど、6弦ベースでどうしてもプレベの音が欲しいと思いまして。でも、ローノイズでとなるとEMGのPタイプしか6弦用のピックアップでは選択肢が無かったんです。他のメーカーも回ったんですけど、6弦用を一から作るとなるとすごい値段になるのと、形状がソリッドボディではないので、通常のピックアップだと弾きにくいし何か扱いづらいということになってしまって。楽器店でアトリエZのJBタイプを弾いた時にめちゃくちゃ弾きやすくて、こういうベースを基にオーダーで作ってもらえないかなと思って、工房が引っ越す前の前のアトリエZへ行ったんです。どうしてもそのベースが無いといけなかったんで、全貯金をつぎ込ましたね 笑。
 

― 最初のアトリエZは偶然の出会いから、そして自身の為のカスタマイズを経て手に入れられたんですね。「ATELIER Z IKEBE ORIGINAL Beta6 / 32”」はその時の拘りはそのままに弾きやすさとポテンシャルを秘めていると思います。
 

BOH:「6弦って弾きにくいんじゃないですか」とか言われることもあるんですけど、確かにミュートは少し慣れが必要かもしれないけれど、弾けるようになるのも「慣れ」ですから。それは初めて弾くのが4弦でも5弦でも多弦でも、あまり関係ないと思うんです。でもこのベースは32インチのスケールも相まってめちゃくちゃ弾きやすいですし、他メーカーですけどあえて32インチで作っている海外のジャズ系の方もいるくらいなので。弾きやすさとサウンドのまとまりを上手く融合したモデルがこの「ATELIER Z IKEBE ORIGINAL Beta6 / 32”」ですね。無理して大きな6弦を使うよりも変な癖がつかずに弾けるようになると思います。
 

 

― ありがとうございます!では、ここからは「IKEBEベースの日」インタビューを伺ってまいります。まずはBOHさんの歴史を追っていきたいのですが、初めて買ったベースは何だったんでしょうか?
 

BOH:僕が最初に買ったベースは、グラスルーツのtetsuyaさん(L’Arc~en~Ciel)モデルだったんです。いわゆるフォレストの真紫色だったんですけど、何の知識もなく「この形かっけぇ!」って買ったら、それがたまたまtetsuyaさんモデルでして、人と同じモデルを買ってしまったことが嫌で 笑。6万円くらいだったんで、高校生にとっては大きい金額だったんですけど。1年後にお年玉とかでフェンダージャパンの、アメリカン・ジャズベースのピックアップが乗った、70sリイシューのオール・ナチュラルを買ってしばらく使ってました。

その後、東京に出てきて、音楽学校の入学祝いで親父にフェンダーUSAのアメリカン・デラックス・シリーズのプレシジョン・ベースを買ってもらってしばらく使っていたんですけど、音楽学校の講師の人に「6弦ベースっていうものがあるから弾いてみろ」って言われまして。安く買える6弦ベースって無いかなって探して、渋谷のイケベでTUNEの6弦ベースを買いました。その後にいろんなミュージシャンの人達のお言葉もあって、もっとしっかりと6弦ベースを探し出すんですけど、当時は6弦ベースってまだ楽器として完成されてないような感じだったんです。1弦だけ音が小さかったりとか、B弦だけ音が大きかったりとか、バランスが悪くてどうしようって思っていて。そんな中で先程の6弦ベースに出会ったんですけど、このまま買って使うなら自分用にカスタマイズしてもらえないのかなって、直接アトリエZに行ったんです。
 

― BOHさんのシグネイチャーモデルを見ると、やはりビリー・シーンのイメージが強くあるのですが。Pタイプであったり、リアに特徴的なピックアップを乗せていたりなど、狙っている音の特徴があるんでしょうか?
 

BOH:普通のジャズベース・タイプってアタックはすごく出るじゃないですか。でも、音の艶とかサスティンの部分をきちんと整えられたベースって少ないなと思っていたんです。細かい早弾きをする時とかも、クリスピーな音だとバキバキってなるだけで、何を弾いてるか分からなくなってしまうんですね。なので、もっとミッドがふくよかでってなった時にPタイプは必要で、ビリー・シーンはフロントにギブソンみたいなピックアップがついてて2系統で出しているじゃないですか。そのシステムって現実的ではなくて、PAさんは相当音作りが大変だと思うんですけど。ただ、仕事の中で1ピックアップだけだと対応できないので、後ろにハム・ピックアップをつけようとなったんです。普通にJタイプでもよかったんですけど、もし包み込む感じが要らない時はEQで要らない部分をカットすればいいだけなので、PJタイプよりはハムの方が全体を包み込むような感じにできるなと。出ていないものは持ち上げられないので、そういう意味でもハムの方が僕の場合は音作りがしやすかったんです。
 

― お話を伺っていると、選ぶものに軸がありますよね。使う機材がいろんな種類やジャンルに飛ばずに、全て必要なものに繋がっているといいますか。
 

BOH:自分の拘りみたいなところが、昔から変わってないんでしょうね。高校生の時にビリー・シーンのプレイを聴いて憧れたんですけど、スキャロップも見た目がカッコいいけど、こんなに深いとめちゃ弾きづらいじゃんと思ったんです。でもあった方がハイポジションのタッピングで指をかませることができるので、最初はベースをオーダーする時は、「うす―くスキャロップしてください、目立つようなカラーリングはしなくていいので」って 笑。
 

― そういえば、今日のクリニックでも使用されたサンバーストはピックアップ・フェンスは付けていなかったですね。
 

BOH:あれはフレットレスでスラップをしないので、代わりにフィンガーランプをつけてもらっています。アクリルで作っていただいているので、パっと見は分からないんですけど。
 


 

― なるほど。仕様もしっかり使い分けているということですね。では、次に使用されている弦なのですが。
 

BOH:最初はアトリエZの弦を使わせていただいていました。これは自分の指の質もあるんですけど、通常のメーカーの弦だと早いパッセージを弾きたい時に、指にまとわりついてくるんです。フィンガーイーズをつけていたんですけど次第に手が荒れてしまって、どうにかならんもんかなってなっていた時に、ちょうどエリクサーを試す機会がありまして。ナノウェーブになってから細かいプレイに引っかからないっていうのと、普通の弦だと弾き始めと途中とで音が変わっていくところが気になってしまうんですけど、エリクサーは死んでいく感じがなだらかなので。ずっと使うことを考えると経済的にもそっちの方がよかったので直接本社に出向きまして・・・僕、気に入ると会社に行く癖があるんです 笑。
 

― 笑
 

BOH:何度も通っているうちに熱意が通じたのかエンドースの契約を結ばさせていただきました。代理店ではなく、特許を持っている日本ゴアさんに何度も伺ったんですけど、何回目かでゴアのコーティングについてのDVDを2時間くらい見て、担当者の方と真面目な話を延々として 笑。自社の技術と展開に関してとても熱意があって、是非使わせてください、と。実際に作っている人の話を伺うのが製品を知るには確実ですからね。
 

― 我々も作り手さんからお話を伺うと、理解していなかった深い部分まで知ることができますね。
 

BOH:大事です。オヤイデ・ケーブルを使っているんですけど、直接お話をさせていただいて「こういう仕様で」ってオーダーをしています。あとは、アンブレラカンパニーのコンプレッサーはバック・トゥ・ベーシックっていうモディファイされたもので、渋谷のイケベで買いました。
 


 

― ありがとうございます 笑。いやしかし、こういうものが必要だっていう点がすごく明確ですよね。
 

BOH:僕の場合は、自分のバンドというよりも、サポートとして呼ばれる現場が多いので、「こういう音を出して欲しい」っていう先方のオーダーがまず明確なんです。なので、自分がどういう音を作っていけば仕事的に円滑になったり回りのサウンドを引き立たせたりできるのかっていうことを考えると、ブレる隙が無くなるというか。もし自分がバンドマンやソロアーティストだったら、あんなのもいいなぁってブレてたかもしれないです。
 

― 明確ですけど、フレキシブルという感じですね。武器がちゃんとあるという前提ですけども。
 

BOH:まずはアトリエZの6弦ありきで・・・(僕の)ビジュアルも厳ついじゃないですか 笑。それありきで呼んでくれる人もいるんですよ。先入観だったりで物事をいうところにアトリエZを持っていくと、音がいいので黙らせることができるというのもありますね。
 
 
 
 
 

僕のフラットは、「自分の持っているBOH’s CUSTOMの良さを消さない」っていうこと。



 


 

― 黙らせられるってすごいですよね。使用されているアンプとはどういっためぐり合わせでしょうか?
 

BOH:ずっとレンタルしたり、デビューした時はバッソンのキャビネットを使ったりとかしていて・・・ただあのキャビネットはめちゃくちゃ重いんですよね 笑。EBSを使っていた時期もあったんですけど。6弦ベースを鳴らす時に困っていたのは、高い音が出ないというところと、早いパッセージについてこれないってところでして。アトリエZがもともとアタッキーな成分があるので、どうも自分の求めているものにならなかったんですね。いろんなものを試す中でマークベースが出てきまして、アンプ単体でいえばライン出しみたいな音がしているんですけど、1弦から6弦までのブレが無くて、自分が思った音を素直に出してくれるんです。
 

― 最初から今のヘッドアンプを使っていたんですか?
 

BOH:最初はTA 503を使っていて気に入っていたんですけど、廃盤になって違うものを使うことになりまして、幾つか試させていただいた中でよかったのが今のEVO1です。リトルマークIIIのチャンネルで使っているんですけど、リトルマークIIIを使うよりもEVO1に入っているリトルマークIIIのシミュレーションの方が、僕にとってはラインの感じとかも合っていて。PAさん的にもっとハイやローを出してほしいということがあったら、自分のポストプリでミキサーに送って、会場によって合わせるという風に、僕の責任でやらせてもらっています。アンサンブルに混ざった後は完全にお任せですけども。
 


 

― DIを繋がずにアンプから直接というのは、まだまだめずらしいですよね。
 

BOH:いいDIがいっぱいあることも知ってるんですけど、無くてもいいものを増やしていきたくないので 笑。それをやりだすと、電源もいいのを買わなきゃいけなくなっちゃうじゃないですか。すごい人だと「自分で設計した回路じゃないとダメだから電柱立てさせて」って言って、自分の家のレコスタの為だけに電柱を立てた人がいますからね 笑。
 

― ギタリストの方で伺ったことがあります 笑。DIを繋ぐと音やニュアンスが変わるんですよね。特にパッシブは変わりやすいので、自分のフィーリングとズレてしまう感覚があります。
 

BOH:せっかく前に出るように音を作っているのに、一幕張られて遠くに行っちゃう感じがすごく嫌なんです。アンプからの音も鈍くなってしまうし、変な圧縮感が出たりするんですよね。あと音作りでいうと、「フラット」ってすごく聞くようになったんですけど、何をもってフラットなのかって考えるじゃないですか。僕のフラットは、「自分の持っているBOH’s CUSTOMの良さを消さない」っていうことなんですけど。店頭でも「良い歪みありませんか?」って聞かれませんか? 笑。
 

― すごく聞かれます 笑。何をもって良い歪みなのかは人それぞれなので、どういう歪みが好きなんですか?ってまずは狙いを聞きます。
 

BOH:自分だけだと不安なので他の人の意見も確認したいんだと思いますけど、良い音も人それぞれですからね。そういえば、この前初めて試奏させてもらったアトリエZの新しいスラント配置のピックアップは、クリスピーさが抑えられてて粘る感じがあったんですね。じゃあ今までのピックアップと新しいそのピックアップのどっちがいいかっていったら、自分が出したい音次第じゃないですか 笑。スラップのバキっとした音を出したいなら今までのピックアップの方をオススメするでしょうし、まずは「どんな音ありきか」なので。
 

― 「こうしなきゃいけない」って考えになってしまって悩まれているケースが増えていて、でもよく掘り下げていくとやりたい音楽は明確にあるんですよね。答えはそこにあるのかなと思うんですけど。
 

BOH:あとは、現場もイヤモニが主流になっていて自分の好きなようにミックスができるんですけど、スタジオって環境的にそうではないじゃないですか。明らかにベースが抜けない配置になっていたりとか、そこで悩むのであれば少しベースアンプの向きを変えてみるとか、できることはあるんですよね。お話を伺うと無茶な状況で良さを引き出そうとしすぎるところが多くて、そうなると自分中心になるので音もどんどん上がっていきますし。
 

― 一口にリハーサルといっても、ライブを想定して横に並んでやるリハーサルなのか、楽曲の中身を確認したいから丸っぽくなるリハーサルなのか、目的に適していないままやって悩むケースもありますね。いろいろなお話を伺わせていただいたのですが、最後にこれからベースを始める方や、6弦ベースに関心を持っている方へ一言いただけたらと思います。
 

BOH:まずは弦の数は関係なしに、自分がやりたい楽器、自分がやりたいジャンルとか、自分が興味のあることをやらないとと思います。人から薦められてやるものでもないと思いますし 笑。自分が楽しむ為にまずはやってほしいなって思います。やっている内に、プロやアマチュアとか関係なく続けていると見つかるものってありますし、楽器は自分の人生を豊かにするものであるべきだと思うので、まずはそれを第一に難しく考えずに始めて欲しいですね。
 

― 本日はありがとうございました!
 

BOH:ありがとうございました!

 

 


 


 
 

 
BOH(ボー)


1982年8月14日生まれ、北海道旭川市出身。15歳でベースを始め、18歳から6弦ベースをプレイする。音楽専門学校卒業後はさまざまなアーティストのバック・バンド、サポートをこなし、広い音域を駆使した技巧派グルーヴで頭角を現わす。2008年にロックバンドBINECKSでメジャーデビュー。現在は自身のバンドである仮バンドの他、ニコニコ超パーティーの超バンド、シオカラーズ、テンタクルズ、戦術音楽ユニットワルキューレ、松岡充ひきいるMICHAEL、浜田麻里などのバックバンドとして国内のみならず海外でも活動している。

 
BOH Official Site : http://www.bassist-boh.com/
BOH Official Blog 「六弦BASS道」 Powered by Ameba : https://ameblo.jp/bassist-boh
BOH Official Twitter : https://twitter.com/bassistboh

 

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