人時 / 「限界を超えるベース」から、「バンドを活かすベース」へ。進化し続けるベース遍歴を紐解く。

2019年1月11日

 
「黒夢のベーシスト」と聞いて、衝動を詰め込んだかのような激しいピッキングを用いる演奏を思い浮かべる人は多いはずだ。他には類をみないハードなサウンドながらも数々のヒット曲を量産し、1997~98年にかけては約230本ものライブを慣行するなど、その激しく突き進むイメージが色濃い。

しかし、その後のソロやサポート・ミュージシャンとしての活動を見ていくと、黒夢とはまた異なる必要なベースサウンドの構築や、機材に頼りきりにならない為の演奏技術など、様々な現場で活躍する「ベーシスト」としての面が見えてくる。今回は黒夢を結成する前の、ベースを手にするきっかけとなった時代から、現在にかけてのベース演奏へのアプローチなども含めて、その遍歴を語ってもらった。

取材 / 坂本浩明(ベースハウスイケベ池袋
 
 
 

ベーシストとしてやろうというよりは、憧れている人と一緒に音が出せるというのが、一番大きかったのかも知れません。



 
― 本日はよろしくお願いします!さっそくですが、まずはベースを始めたきっかけからお聞きします。
 

人時:よろしくお願いします。僕が18歳になる頃だと思うんですけど、もともとぼくはギタリストをやりたくて。その頃、地元の英雄みたいな方がいらっしゃって、その方にローディーとして着くようになったんですけど、そのバンドが解散してしまったんです。その後、新たなバンドを組まれる際に、ベーシストはいらっしゃったんですけど辞めることになってしまい、それでベースを探している時に、たまたま他でぼくがサポートでベースを弾いていたところを観ていただいたんです。「弾けるんじゃない?」「じゃあやってみない?」というお話をいただいて、尊敬している方と一緒にやれる機会を設けていただいたんです。そこからが(ベーシストとしての)始まりですね。なので・・・何も知らない状態からいきなりオリジナル曲を始めたので、訳わっからんでした 笑。

 
― その頃、ギターは弾かれていたんですよね?
 

人時:弾いてました。ビル・ローレンスのテレキャスター・タイプと、足元はBOSSのMEシリーズのマルチエフェクターを買って、家でヘッドフォンしながら遊んでましたね。そこからベースを弾くようになって、初めて買ったのがグレコのフェニックス・ベース「PXB-800」ですね。ピックアップはPJの、いわゆるスペクター・タイプのものが初めてのベースでしたね。最初は本当に訳がわからなくて。ギターとはスケールが違うし、歌と(音域が)ぶつかってるって言われても分からないしで必死でしたね 笑。

 
― プロになろうって思ったのは、その頃ですか?
 

人時:そのバンドがプロを目指すバンドだったので。そして黒夢の前身バンドであるGARNETに入って、それが気持ち的にも活動的にも「もうプロに行くでしょう」というバンドだったので。若さゆえの無謀というか、何も知らないだけなんですけど、漠然と「メジャーデビューするんだ」っていう気持ちでやってました。

 
― 濃いですね 笑。学生の頃にギターをやられていたという・・・
 

人時:実際は、高校二年で中退して、その翌年から先程のバンドのお手伝いをすることになるんですけど。中学の時点で友達の家が溜まり場で、楽器が一通りあったのでそこで一通り触っていたんです。友達はカシオペアが大好きで、同い年だけどカシオペアをコピーしてたんですけど。中一くらいからずっと溜まり場でやってて、中三くらいからドラムを始めたんです。違う友達がドラムセットを買って、それで教えてもらって高一の時にバンドを組んだんです。ドラマーという程ではないんですけど「ドラム触ったことありますよ」くらいの感じでやってましたね 笑。

 
― ベースをやるきっかけとしてよくある、「ベースがいないから」というものではあるんですけど、少し状況が特殊ですね。
 

人時:高一の時に「ベースやりたい」って言ったんですけど、もういたのでドラムをやったんですけど、その後に本気でギタリストになりたいと思ってお手伝いをするようになってから、周りも本気モードになっていって。そこから「ベースいなくなっちゃったからやってみない?」というスケールの大きな振りがあって 笑。当時、山下久美子さんのカバー曲をやるバンドのリハーサルを、その憧れている先輩が観てくれて、「弾けるじゃん」ってなって。ベーシストとしてやろうというよりは、憧れている人と一緒に音が出せるというのが、一番大きかったのかも知れませんね。

 
― 黒夢の前にだいぶ濃い冒頭が出てきました 笑。
 

人時:笑

 
― ベーシストとして本格的に活動するとなった時に持っていたベースは、先程仰っていたグレコですか?
 

人時:憧れているギタリストの方に、グレコかアイバニーズかどちらかと言われて。たまたま周りにはアイバニーズを使われているベーシストの方がいらっしゃって、一緒だと嫌だなと思って。グレコは手元には無かったので注文して、どうせローンで買うんだから一番高いやつを買ってやろうと 笑。10万円くらいのだったと思うんですけど。それと意味もよく分からないまま、BOSSのハーフラック・タイプのコンプレッサーと、グラフィック・イコライザーを買って弾いてましたね。

 
― ラックだったんですね。
 

人時:90年代初頭はラックが大ブームだったんです。

 
― なるほど。では次に、グレコ以降のベースについて伺いたいのですが。
 

人時:グレコの次は、プロシードというESP系列メーカーのベースを使わせていただくことになりまして、デビュー当時もプロシードを使っていました。ヘッドがクワガタみたいな形の、もともとメーカーにあったモデルなんですけど。それが僕のモデルとなって、そこから色を変えたり、木材を変えたりして何本か使ってました。その頃は有りものをカスタマイズしてやってた感じですね。そのあとはピックアップが3つ付いたジャガー・タイプのベース、黒夢の活動休止前にジャズベース・タイプを作りました。

 
― ナビゲーターも使われていましたよね?
 

人時:ナビゲーターは、ジャズベース・タイプだったかな?そのあとに60年代後半のジャズベースをレンタルしまして。

 
― あのボロボロの・・・
 

人時:ボロボロのやつを使ってたんですけど、僕がさらにボロボロにしてしまったので、その後リース禁止になりました 笑。

 
― あのベースには、そういう経緯があったんですね。
 

人時:1ツアーずっと使ってたんですけど、力任せに弾いていたので。よくオールドベースで指弾きの方のものって、親指を掛ける部分が削れているじゃないですか。僕の場合は1ツアーでそこがピックで削れてしまっていて。本当に気に入って、買い取りたいって話をさせていただいたんですけど・・・その後は貸せなくなりました、と。

 
― たしかリース会社の貸し出しリストにまだ載っていたと思うんですけど。
 

人時:載っていると思います。僕は借りられないです 笑。95年くらいに、佐久間正英さんのオリジナルブランドのトップドッグで一本作って、毎年のように作っていって。ジャズベース・タイプも作って、オール・ローズのジャズベース・タイプを作ったりしましたね。黒夢の活動休止後に69年くらいのジャズベースも所有したんですけど、メンテナンスに難を感じて、さらに自分がオールドのジャズベースの音を求めているわけではないということを再確認して手放しました。ネットが普及している時代ではなかったんで、ツアーで各地に行く度にタウンページとかで地域の楽器屋の住所を全部調べて、めぼしいものがあったら買っていくということを、ベースもギターもやっていたんです。メーカーさえも分からないような楽器を買ったりもしましたし、改造して面白おかしく弾いたりしてたんですけど、あまりに多くなりすぎちゃって「これはマズい」となって 笑。その後はシェクターさんにお世話になることになり、現在に至る感じですね。

基本的には、ジャズベース・タイプを考えていたんですが・・・佐久間さんが72年のジャズベースをお持ちになっていて、それがすごく良くて。BOØWYの松井恒松さんもそれを使ってレコーディングしたことがあって、松井さんが「100万で買う」と言っても手放さなかったという逸話もある一本なんですけど。そういったこともあってジャズベースに憧れていた部分もあったんですが、ある日のレコーディングでフレーズやリズムなどのアプローチで悩んでた時に、佐久間さんが「ちょっと僕、弾くね」とプレシジョンベースでドラムのそうる透さんと、たしかICE MY LIFEを弾き始めたんです。そうしたら、そのプレシジョンベースの音の太さが衝撃的で。その後に自分で弾くとペラペラした音になっちゃって「あれ?なんでこんなに音が違うんだろう」っていう衝撃的な出会いで、そこから(プレシジョンベースに)憧れが出始めて。あの時に衝撃を受けたゴツい太い音をどうやったら再現できるんだろうというのが第一にあって、そこでプレシジョンベースの形にもこだわるようになりました。
 

2018年9月1日開催、「SCHECTER&ベースハウスイケベ池袋 Presents 人時”黒夢”Bass Clinic & Sound Seminar Vol.2」ダイジェストムービー Part 1
 
 
 
 
 
いかに歌い手が気持ちよく歌えるかというところが大事です。



 

― そこから、現在のシェクターの4弦&5弦に繋がる形ですね。
 

人時:途中にギブソンのEB-IIDとか、RDも弾いてましたね。ギブソンもフェンダーも、(ミュージックマン)スティングレイ、スペクターとかも、おおよその有名どころは当時弾きましたね。

 
― 触れた本数がすごいですね。
 

人時:もう全部は覚えてないですから。今でも覚えているのは、北海道にツアーで行って際に大手の楽器屋さんに74年のプレシジョンベースがあって。見た瞬間に「買う」ってなって 笑。これは面白い、とかピンときたものはなるべく手に入れようと思ってた時期でしたね。他の中古楽器屋さんでも、メーカーも何も書いてないけどジャズベース・タイプだ、よく調べるとヤマハっぽい、とかもあって。安いから悪いとかそういうことは無くて。年月が経って良くなってるという楽器もあるでしょうし、「安くて良いものはどこにあるんだろう」っていう感じで探してましたね。

 
― 現在は「安くて良いもの」っていう観点は少なくなってきている気がして、目を引くのは「良いものが安くなっている」なんですよね。それこそ情報もすぐに手元で見れますから、人時さんのように足を使って探すという意識は、若い世代は少なくなってきているのかなと思います。
 

人時:僕の時は、タウンページを開くと何軒も楽器屋があるので、いかにインパクトがある店名を選ぶとか。仙台に「うつぼ」という店があるんですけど、メインは質屋で楽器館があるんです。オールドは無くて中古ばかりなんですけど、ビニールでくるまってるんです 笑。しかも試奏もできないんですけど、当時定価20数万円のトム・アンダーソンのテレキャスター・タイプが7万円で売ってたんです。「なんじゃこりゃ!」って、店の隣にATMがあったんですぐに下ろしに行って 笑。当たりだったんで、ギターはKEMURIのTさんに誕生日プレゼントとして差し上げたんですけど。そうやって自分の足で行って試奏して良い悪いを判断して買ったりとか。佐久間さんからの受け売りでどういったものが良いかを聞いていたんですけど、それがどう良いのか実際に試してみないと分からないので試していったりとかしていましたね。

 
― 楽器選びの、基本の基本ですね。
 

人時:自分のソロをメジャーで出させていただくことになった際に、佐久間さんがプロデュースで、ドラムがそうる透さんっていう布陣で、59年のギブソン・レスポールと同年代のマーシャル・スタックを用意していただいて。2つで1千万!とか、佐久間さんも59レスポールを持って「これ、すごいんだよ~。弾いてごらん」「え~500万円ですよね」とか言いながら 笑。90年代って今ほどバジェットがシビアではなかったので、予算がそれなりに潤沢にあって、レコード会社にも体力がありましたから、実験ができる機会が多かったんですよね。「やってみなきゃ分からない」「ならやってみる」ということが実際にできたので。それは未だに宝ですし、いろんなベースを弾かせていただいたりとか、初歩的な疑問をある程度クリアできましたしね。

 
― 今は、新しい機材の良い所ってWebを見れば全部分かるようになっていますし、便利になった分だけ、スポイルされちゃった部分だけしか知らない人たちが増えてますね。
 

人時:若いコたちがYouTubeの試奏動画で判断して買うことが増えているっていうのが衝撃でしたね。そんな怖いことするのって 笑。

 
― 「YouTubeで聴いて来たんですけど、弾くと違いますね」って言われることも多くて、環境もそれぞれですし動画とは違いますよ~という。でもそれで判断してしまうんですよね。
 

人時:色んなハードが出てきる中で、特に足元の進化はすごいと思うんです。僕らの時はサンズアンプがまだDIとしてブラックボックスが入っている頃でしたしね。それを経験していることは強いですし、今の若い世代はそれを経験する環境が無いので、それは残念だなと思いますね。

 
― 以前、ベテラン勢と若手のバンドが出演するライブのリハーサルを拝見させていただいた際に、音がまんべんなく広がるのはベテラン勢なんです。他のバンドと音がどう違ってくるのか注意深く見ていたんですが、PAさんはライブハウスの方で他のバンドも同じ方が担当されていたんです。機材やジャンルなど色んな要因はあると思うのですが、小さい音を大きくしていく場合と、大きい音から小さくしていく場合とが違いであって。大きくてもしっかり聴こえるように作ってボリュームを下げましょうというケースと、良く聴こえるところを上げていきましょうというケースの違いといいますか。便利になった分、必要な部分だけが聴こえてしまうので。
 

人時:他のベーシストと試したことはないんですが、僕の場合でいうと、必ず(ステージの)センターに立つんです。それは、自分の音がセンターに立った時にどう聴こえるか、歌を歌う人にとってベースが音階として聴こえるのか、低音として聴こえるのか。低音として聴こえてたら駄目なんです。ピアノでいうと、88鍵あって下の音も音階として鳴らすんですけど、ローの成分ってそこまで無いじゃないですか。その延長上で、ベースも音階として聴こえるかどうか。アンサンブルを担う低音は必要なんですけど、低音として周波数は必要ではなくて、音程が低い音階が必要なんですね。なので、音階がどう聴こえるのかはすごくチェックします。そこで要る周波数、要らない周波数を探して、自分の中でOKと感じれば歌い手さんもだいたいはOKですね。いかに歌い手が気持ちよく歌えるかというところが大事です。自分のバンドで、自分のわがままでやりますっていうバンドは別ですけど。お仕事として参加するものに関しては、そこは徹底してやります。/span>

 
― 歌い手も人それぞれで鳴りが違いますからね。
 

人時:そうですね。会場の大きさでも変わりますしね。会場が小さめだったり生音が重要視される場所だった場合は相当意識しますね。ボーカリストの特徴だったり声の乗りだったりとか、ハイトーンになるとドンシャリはキツいとか、ミッドを利かせた方がメロディーとの距離感が一緒のところにいれるなとか、そういうことは意識します。自分がセンターに立って歌いづらいことがないようにするところから始めます。

 
― なるほど。弦など細かいあたりも伺えればと思うのですが。
 

人時:ロトサウンドを使わせていただいてまして、4弦がスチール弦で、5弦をニッケルにしています。やはりニッケルの方が指の馴染みが良いですね。スチールはギラギラしていて手触りもザラつきがあるので、指の皮を削りながら弾いているような男くさい感じもあって。ロトサウンドにしたのは、老舗というのもありますし、プレシジョンベースの衝撃を受けた時に佐久間さんが使っていた弦がロトサウンドだったというのもありまして。弦に対する表現で「死ぬ」という言葉があるんですけど、ロトサウンドは死んでからのサウンドも独特で、それが個人的に好きな時があって、それをあえて使う時もよくあります。新品でカリカリさせる時はニッケルの方が良いとは思うんですけど。スチールのギラギラしたものが自分の手汗とかで詰まっていって、ポコポコするようになってからのロトサウンドは、いわゆるローファイの昔を思い出させるサウンドで、それをブーミーに弾くというのが好きなところですね。

 
― クラシックなベースになる感じですね。
 

人時:古臭いような、逆にそれが良かったりすることもあって。

 
― 5弦をニッケルにされた、逆にいえばスチールにしないというのは、どういった意図でしょうか?
 

人時:未だに悩んではいるんです。ただ5弦となると、上から下までまんべんなくバランスよくってなってくると、下でまとめようとすると上が足りなくなるし、上でまとめようとすると下のバランスが悪くなってくる感じがしていて。色んな現場に行って思うのは、一番必要なのは出力のバランスなんですよね。上から下までまんべんなく出て、上も下も削れて、もしくは足せて、ということができないとはかどらないというか。そういったことを考えると、まだニッケルの新品の方が扱いやすくて弦鳴りもするので、5弦ではずっとニッケルを使っています。ただ、スチールの古い弦のギラギラした音も好きなので、時と場合によってでもいいのかなとは思っています。

 
― ひとつのブランドを使い続けていて、その感触のまま他のブランドも使ってみようということはなかったですか?
 

人時:たまに必要な時にロトサウンドが無くて、他のブランドを使うことはありますけど、そこに演奏する上でのこだわりだったり、自分が憧れた人が使っていたというのもあるでしょうし・・・そこが違うところなのかなと思いますね。

 
― 気持ちが入っているということはやはり大きいと。
 

人時:あるとは思います。ロトサウンドのスチール弦は、他にはなかなか無いものだと思います。

 
― ピックは0.6mmを使用されていますね。
 

人時:昔、0.8mmから1.0mm、1.2mm、1.4mm、1.6mm、1.8mm、2.0mmまでどれが良いかって7種類作ったんですよ。当時は硬い方が太い音が出るって言われてて、じゃあ厚みのある方が太い音が出るんじゃないって話して、FAKE STARの頃に0.2mm刻みで作ったんですけど、やっぱり当時2.0mmはダメでした 笑。なので結局1.0mm、1.2mmに落ち着いたんですけど、当時は1.2mmが基本だったと思います。2.0mmは、沖縄の三味線奏者の人たちにえらい喜ばれたそうです 笑。

 
― 笑
 

人時:ピックはもう散々いろいろ試したので。厚さから顔料から。

 
カメラマン:顔料??
 

人時:顔料の色で変わるんですよ。黄色は黄色の音、黒は黒の音。なのでプレーン(白)が本当の材質の音なんです。当時は色も20種類くらい作って、微妙に違うんですよ。ピック弾きでそこまで考えて実践した人はそういないと思います。

 
― 自分のピックを作って完成ではなく、さらに色別の中から選ぶわけですからね。
 

人時:ESPでポリアセタールのピックを開発するようになったのは、僕が初めてだと思います。

 
― 笑
 

人時:当時、ジム・ダンロップのピックと同じ材質を使いたいと話をさせていただいたら、「特許を取られているので使えません」と言われまして。でも、「それと近い材質のポリアセタールならあります」とのことで、それで作ってもらったのが、ポリアセタールのピックの始まりなんです。

 
― もともとはツルツルしたセルっぽい素材が多かったですよね。
 

人時:僕の場合、セルっぽいピックで黒夢のSICKという曲を演奏すると、1曲もたなかったんです。そこからピック作りが始まったんです。
 

2018年9月1日開催、「SCHECTER&ベースハウスイケベ池袋 Presents 人時”黒夢”Bass Clinic & Sound Seminar Vol.2」ダイジェストムービー Part 2
 
 
 
 
 
「適材適所の音」が基本的に「良い音」だと思うんです。



 
― もはや開発者の域ですけど 笑。エフェクターに関しては、クリニック中のお話にもありましたが以前よりも減っているということですね。
 

人時:もちろん便利さを優先しているということもあるんですけど、足元って劇的に進化しているじゃないですか。もちろんアナログの良さもあるんですけど、ベースアンプもライブハウスのPA卓もデジタルが当たり前になっているので、デジタルに対してデジタルで向かって行っても何の問題もなく、立ち上がりやレイテンシーの問題なだけなので。足元で音を作る時代になって、アンプを持っていないミュージシャンもいたりして、足元も進化して物自体も良くなってきているので。

僕からすると、何でも良くなっているのも事実なんですよ。若いコたちが「○○○じゃないと嫌だ」「○○○は当たり前すぎて嫌だ」とか聞くんですけど、サンズアンプなんて創成期からやっているんで、僕はそこまで執着が無いんです 笑。ベーシストとして基本になるものは大体触ってきて、音の傾向も何となく分かっているので。そうなると結果的にインプットする技術や竿(ベース)のキャラクター、自分が弾くタイミングだったり、両手のバランスやピックの当て方、強弱、ピックアップのバランスなどを踏まえたインプットがどう入るかがとても大事なんです。なので、もちろん良い足元があることも知っているんですけど、「この歪みじゃないとダメ」とかいう概念があまり無いんです。それよりもそこにどう自分の100%の音を入れてあげられるかどうか、(サウンドを)増幅してあげられるかということの方が重要だと思っているので。何を使おうが自分の音にならないといけないと思っているので、「サンズの音、いいよね」ではなくて「サンズで何でそんな音出るんだ、何でそこまでゴツい音するんだ」っていう方が僕は大事です。なので、足元には自分にとって弾きやすい音、ニュアンスが出しやすい音がそこに含まれてさえいれば、何でも良いかなって最近は思います。チューナーは精度が高い方が良いですけど(使用しているチューナーはピーターソンのストロボストンプ・クラシック)。
 

 
2018年9月1日開催、「SCHECTER&ベースハウスイケベ池袋 Presents 人時”黒夢”Bass Clinic & Sound Seminar Vol.2」でのエフェクターボード
 
― ちなみに今、ドライブのキャラクター設定は何ですか?
 

人時:何だろ?弾いてて(良いのがあったら)「これで良いや」っていう感じで 笑。

 
― そういうことですよね 笑。歪みの成分というよりも、アプローチした音が出てくれれば・・・
 

人時:アプローチした音とリンクしたイメージというか・・・。歪みの音100%で出しているわけではなく、基本は実音と歪みは50%/50%で出しているんですけど、歪みがどう自分の実音と混ざってくれているかですね。分離してしまうことは僕は避けたくて、歪んでいるけどゴツい音が出ているっていうのが僕の理想だったりするんです。

 
― コンパクトエフェクターはその音を求めて使うものですけど、求めている音が入っているからマルチを使っているということですね。いろいろ回って辿り着いたという形かと思いますけども。
 

人時:そうかもしれないですね。この前、後輩のベーシストとうちで合宿したんですけど、逆アングルのピッキングから譜面の読み方まで、短い時間だったんですけどいろいろレクチャーさせていただいて。いろいろ試して最近はサンズを外したみたいで 笑。外して素の音になった分タッチが難しいんで、激しい曲をいかに平らに弾くかが大事になるので失敗もしてますけど、「ハマった時はすごく良いです」って本人も分かってくれていて。その時に、自分のインプットさえしっかりすれば、基本的に何を選んでも自分の音+歪みというのが出るので、それが良いと思うよという話はしましたね。

 
― 思い描いた通りに弾くことができる技術と、機材のポテンシャルが掛け合わさるとベストなパフォーマンスに近づいていけるのかなと思います。
 

人時:レッスンを行っていて思うのは、「思い切り弾いて」って言っても思い切り弾いてないことが多いですね。限界値の思い切りを知らないんですね。若いコたちは、どこまでやるとダメで、どこまでがオッケーかまだ知らないケースが多いです。本当の技術って、右手の強弱を何通りできるかになってくるんです。著名なベーシストの方が、「1音で100通りの音が出せる」と仰っていて、それがまさに技術を集約しているような言葉で。弾き方1つで音色を変えることができるのが技術で、それがやろうと思ってやるのではなく、感覚的にできているということが体得しているということだと思うので。僕はまずこれでもかっていうくらい思い切り弾いてみることをオススメしますね。ここまですると音は潰れますっていうのが分からないと(限界の音が)出せないので。

 
― 音にならない音を出せた時がピークだと。
 

人時:僕、黒夢で散々やってきたんで 笑。それを修正して基本ができて今があるので。自分にとって両極端を知っておくというのは、すごく大事だと思います。TAKUYAくん(ex.JUDY AND MARY)とROBOT+Sっていうバンドをやっていた時に、「日本人は削ることが下手なんですよ」ってよく話していて、足すことは得意なんですよね。フラットな状態から何が要らないかっていう削ることを恐れるんです。PAのやることって削ることじゃないですか。それぞれの音をまとめる為に、それぞれの音をシェイプアップしていって、一つ一つ固めていってステレオのところから音を出すっていうことをやっているにも関わらず、演奏者はその逆をやっていることが多くて。音量を上げることによってレンジも広がって聴こえるので、余分な音がどこにあるかが分かるということなんですけど、なのでそこで何を削るかがすごく重要なんだと思うんです。昨今の楽器ってフラットな傾向で、フラットからドンシャリ傾向が多いと思うんですけど、ベースの肝はミッド、ローミッドの山をどう作ってあげるか、どこまで出すかを考えることが大事で。楽器の特性を知ることが重要ですね。

 
― サウンド作りの話に入りましたが、現在はコンプレッサーは入れてますか?
 

人時:入れてないですよ。Creature Creatureのローディーの人に「手コンプ」って言われましたから 笑。

 
― 笑。以前のイベントの際は、「コンプを入れたんです」という話をされていたのですけど。
 

人時:今は外してます。もちろん入れるとバランスは良くなるんですけど、「手コンプ」って言われてから、「要らんっちゃ要らんな」という感じですかね 笑。

 
― 「右手でコンプレッサー」ということですね 笑。ご自身のソロのレコーディングは、ライン録りだけにされたりはしますか?
 

人時:外部案件でも自宅で録音するケースはあって、自分の家で2チャンネルを使って録るんですけど、宅録と同じでDIはユニバーサルオーディオの601と、家にあるプリアンプを「これかな?」っていう感じで繋いで、そこからPCの中のシュミレーターを使って作っていきます。基本は、ライン音源をどこまでしっかりしたものを録るかなんですけど、僕自身がデビューした時からラインだったんですよ。佐久間さんのスタジオに行って、当時はドローマー1960の2チャンネルで、チューブ・コンプレッサーに繋げて、佐久間さんがちょこっと調整するだけなんです。なのでラインに対して何の後ろめたさもなく 笑。ベースはライン楽器だと思っていたくらいだったので。もちろんスピーカーで鳴らした音の良さもあるんですけど、位相がズレての気持ち悪くなったり滲んだりする問題も出てくるし。スピーカーの鉄板や(アンペグ)810のカバーを外して、むき出しにしたらどうなるんだろうとか、鳴らしたら全然よくなかったりとかして、幕は計算されて作られてるんだなとか考えたりして。いろいろ試してきた結果、スピーカーで録りたいのなら、ちゃんとしたスピーカーで、ちゃんとしたスタジオで、ちゃんとしたエンジニアさんにお願いしないと無理なんです。それならPC上のシミュレーターで録った方が間違いなく良いです。

メンバーたちの「そこで鳴らしている空気感」を出したいのであれば、スピーカーの重要性はすごく分かるんですけど、今はフラクタルやケンパーやらで張り付いている状態でどう空気感を求めるんだという話になっちゃうとスピーカーは要らないんですよね。ましてや今はドラムでもキックやスネアも差し替えで、僕はそれが嫌いだけど時代の流れだから仕方ないというのも事実ですし。そこにベースの空気感を出すというのはナンセンスかなと僕は思います。ドラムも生で録って、生でなくてもトリガーで芯を出してあげるとか空気を重要視している音楽形態だったらスピーカーは必要だと思いますけど。PC上のシミュレーターは本当に優秀だなと思いますね。

 
― 先程の実音の話に近いですね。プレイヤーがきちんと音を出していれば、あとは応えてくれる機器がそこにあるわけですからね。
 

人時:そうですね。「良い音」って何だろうって考えた時に、「適材適所の音」が基本的に「良い音」だと思うんですけど、出せるところは出せる、要らないと思えば削れる、という音が「良い音」なんですよね。もしくは楽曲に当てはまる、この音じゃないとダメだよねっていう音が「良い音」。「良い音」って自身が好きな音が「良い音」だったりするんで、そこを理解しておくとまた(音作りが)変わってくると思います。スピーカーも外では使いますけど、マークベースの2発とかしか鳴らさないですから。スピーカーは数が少ないほど音が滲まないので。

 
― 驚きました。スピーカーであろうという先入観で聴いてしまっていたので、ラインとは思えない音がするので 笑。
 

人時:笑。黒夢の活動休止明けのレコーディングはスピーカーを鳴らしてますけどね。鳴らさなくてもいいよって言われたら鳴らさないです。

 
― 本日は非常に濃い遍歴を伺うことができました・・・。では、今後の予定や展望などをお願いします。
 

人時:近日ですと、12月12日に新宿のFATEでインストゥルメンタルのライブをやるんですけど、そこでソロアルバムが出せたらと思っています。それと、来年、デビュー25周年なんですよ。
※取材は2018年秋に行われました。
 
― おぉ・・・!
 

人時:楽器を弾き始めたのが18歳で、今年で28年になるんですけど、よく飽きもせずここまで来れたなっていうのが正直な気持ちです。やはり、応援してくれる方が居て、その都度助けてくれる仲間がいて、その都度キーになる人がいて、関係者であってもなくても、その人たちのおかげもあって今ここにいるんだなって思います。感謝しかないですし、このままやらせていただけるのであれば続けたいですし。でもいつまで弾けるかは分からないですし・・・もう46歳なのでそう遠くない年代で先輩たちが亡くなっているのも見てきましたし、そういった現実味が強くなっているので、五体満足で好きな音楽をやっていられることに、すごく考えますね。一回一回のレコーディングやセッション、ライブが本当に貴重で、だからこそ楽しまなきゃいけないと思いますし、楽しみながらももっと真摯に向き合ってやらなきゃいけないとも思います。今やれることをなるべく断らずに、変わらず真摯にやっていくことを粛々とやれたらなという気持ちですね。

 
― 貴重な話をたくさんお話いただきありがとうございました!
 

人時:ありがとうございました!
 

2018年9月1日開催、「SCHECTER&ベースハウスイケベ池袋 Presents 人時”黒夢”Bass Clinic & Sound Seminar Vol.2」ダイジェストムービー Part 3
 
 
 
 
 
 

人時(ひとき)


Birthday: 19th July 1972 Cancer
Birthplace: Gifu. Japan
Blood Type: O
Musical Instruments: E. Bass, Ac. Bass, Ac. Guitar, Programing.
Works: Bass Player, Composer, Sound Producer.

1994年~
■ 黒夢のベーシストとして東芝 EMI(EMI ミュージックジャパン)から『 for dear 』でメジャーデビュー。
1997年
■ ワーナーミュージックジャパンからシングル『 Franchise Music 』アルバム『 Franchise 』でソロデビュー。
1999年
■ 黒夢・無期限の活動休止宣言
2000年~
■ 人時 PIRANHA HEADS 結成。後に dzi-beads 、ピラニアヘッズ、 SSS ( Spicy Sound Scratch )と自信が中心となるバンド活動を展開。同時に、ベーシストとしてジャンルを問わず数々のアーティストのスタジオレコーディング、ライブサポートに参加。
2008年
■ ex, JUDY AND MARY のギタリスト・ TAKUYA のプロジェクト、 ROBOTS ( ROBO+S )に加入。
■ aki サポートで親交を深めたマニピュレーター・横山和俊と Dummy’s Corporation を結成。
2009年
■ 黒夢、日本武道館公演で正式に解散。
■ ROBOTS ( ROBO+S )解散。
2010年~
■ DEAD END のボーカリスト・ Morrie のソロプロジェクト、 CREATURE CREATURE に参加。
■ 黒夢、活動再開を発表。
■ Dummy’s Corporation から事実上の脱退。
2011年
■ 黒夢、シングル『ミザリー』『アロン』を avex からリリース。国立代々木競技場第一体育館公演で完全復活を果たす。
■ ソロワークスの一環として不定期に開催していたアコースティックライブで生まれた楽曲をまとめた、初のアコースティックソロアルバム『ちっぽけな僕の世界』を Khaos Number からリリース。
2012年
■ 黒夢、シングル『 heavenly 』、 13 年半振りのオリジナルアルバム『 Headache and Dub Reel Inch 』を avex からリリース。
日本武道館公演後の深夜に代官山 UNIT にてゲリラライブを敢行。
■ 40歳を迎える本年7月19日、師と仰ぐ黒夢 EMI 在籍時の音源作品に参加していたドラマー・そうる透氏とリズム隊によるインストゥルメンタルライブを開催。
■ 同企画のスタジオレコーディングフルアルバム『 I Never Kill The Groove. 』 11/21 に発売。
2013年
■ 2012年、 11/2 高田馬場 CLUB PHASE で行われたライブと Youtube でトレーラー配信中の MusicVideo フルサイズ 4 曲を収録した DVD 『 LIVE 20121102 I NEVER KILL THE GROOVE. 』 3/16 に発売。東京・名古屋にて DVD リリースライブ敢行。
2014年~
■ 黒夢 DEBUT 20TH ANNIVERSARY
■ 2nd インストゥルメンタルアルバム『 Density 』を 12/4 黒夢・郡山 Hip Shot Japan 公演よりツアー会場にて発売。

現在は再始動した黒夢の活動をはじめ、ベースインストプロジェクト、スタジオレコーディング、ライブサポート、プロデュース、アコースティックソロワークス等多岐に渡り音楽活動を展開中。
 
人時 Official Site : http://hitoki.info/
人時 Official Twitter : https://twitter.com/hitokill
人時 Official Instagram : https://www.instagram.com/hitokill/
人時 Official Facebook : https://www.facebook.com/ki.hito.1
 

 

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