【イベントレポート】2019.9.2 / Dave Weckl Premium Drum Seminar

2019年10月25日

25年以上にも渡り第一線で活躍し続け、世界中のミュージシャンたちから尊敬を集める「世界最高峰のドラマー」の一人、デイヴ・ウェックル氏。

イケベでは約6年振り3度目の開催となった「YAMAHA Drums & Drum Station Presents Dave Weckl(デイヴ・ウェックル) Premium Drum Seminar」に、デザイン&広報部所「Ikebe CREATIVE」の新人スタッフD&Hがリハーサルからセミナー終演まで帯同し目と耳で吸収した内容をレポートとしてお送り致します。

文:D & H(Ikebe CREATIVE) / 構成・撮影:Y(Ikebe CREATIVE)
 
 
 

「まずは叩きやすい環境を作ることがとても大切。」



 
2019年9月2日(月)の昼過ぎ、セミナー会場へ到着したデイヴ氏は準備を整えるとまずは自らドラムセットのセッティングへ。微調整まで一切妥協せず黙々と丁寧にチューニングを行いつつ、「まずは叩きやすい環境を作ることがとても大切」と語ります。ドラマーではない筆者たちから見ても思わず唸るほどの入念な準備です。

「叩きやすい環境を作る」姿勢は楽器のセッティングだけではなく、手元が見やすい位置に光が当たるように照明の当たり加減を指示するなど、妥協を許しません。リハーサルでしか垣間見れない、拘りを持って自らが整えていくという貴重な時間を僅か数メートル先で体感しています。しかし、あっけないと思うほど短時間でサウンドチェックが終了。無駄がない準備とそれを成立させるご本人のポテンシャルに、居合わせたスタッフ全員から感嘆の息が漏れますが、短時間でのリハーサルとなった本当の理由は本編で明らかになります。

一次と二次受付ともに発売から即日完売となったプラチナチケットを手にした非常に幅広い層の来場者で埋め尽くされた会場は、なんとそのほぼ全員がドラム経験者。中には約6年前のドラムセミナーにも参加していたという方も。イベントの数日前に、チック・コリア・アコースティック・バンドで来日公演を行ったばかりということも手伝ってかフロアは物凄い熱気を帯びています。

コージー村上(ドラムステーションリボレ秋葉原)による自らも興奮を抑えきれない挨拶と、一気に最高潮に高まったフロアの拍手と歓声に迎えられたデイヴ氏。「コンニチハ」と和やかに挨拶をフロアへ返しイベントがスタートします。

イベントの通訳はコージー村上とも縁の深いルイス・セスト氏。楽器や演奏にも精通したバンドマンでもあるルイス氏の通訳を通し、デイヴ氏はYamaha Drumsとドラムステーション、そして集まって頂いた来場者の皆様に対して感謝を伝えます。

客席から向かって左を向くように、ステージ中央にセッティングされたドラムセットは、オーク材の杢目が特徴的で高級感があるルックスで、ご本人も大変気に入っているシリーズの「Yamaha LIVE CUSTOM HYBRID OAK」。セッティングされたドラムセットは初めて叩くものですが、「ファーストインプレッションとしてクリアな音でローエンドも出るしオープンで大きな音も出せる。レスポンスもよくこれからも使いたいくらいだ」と絶賛。Yamaha Drumsスタッフ全員の表情に笑顔が浮かびます。

ドラムセットの紹介を終え、音源を使用せずドラムソロへ。ブラシを使用した演奏に始まり、スティックに持ち替えてからの全くブレのない高速プレイや、手数を増やした変則リズムを織り交ぜたドラミングは、ドラムセット一台で演奏していると思えないほどの表現力。繊細かつパワフルで無駄な力みが一切なく、固唾を呑んで見つめていた会場から大きな拍手が巻き起こります。

しかし、当のデイヴ氏は「イヤーモニターのLとRが逆になっていて頭が混乱した」と一言、会場を驚かせます。機材トラブルには全く気づかない程のプレイを最初の演奏から繰り出すデイヴ氏に一同は驚愕です。

「ドラムセットで2番目に大事なのはドラムペダル」と語るデイヴ氏は、フットプレートの長さは自分の体格や音楽のジャンルによって決めるといいとアドバイス。「自分は体格があまり大きくないのでフットプレートはそこまで長くないものを使っています」とのこと。Yamaha Drumsのペダルはどれもいいので選択肢が広がるとも述べます。

「Yamahaのドラムはとにかく頑丈で音がよく一番のお気に入りです。これはお金をもらって言っているわけではなく(笑)、心からそう思っています」

デイヴ氏の公式サイトからスコア付きでダウンロードできる「’Dis Kinda Place」の音源に合わせてのドラムプレイでは、「この曲はすこし複雑だ」と話し「ドラムとシンセのリズムが合っていないように感じますが、実は4/4で合っている」という難しい楽曲で、「半年ぐらい叩いていないから間違っても怒らないでね(笑)」と冗談を交えつつ、心地よいグルーブとダイナミクスの振り幅を見せつけます。

質疑応答では、「ドラムプレイの上で、最も重要なのはセッティングです。セッティングが完璧で無理なく叩きやすい状態にあるとその分楽曲に集中できます。その中でもイスの高さが特に重要で、スティックを振り下ろして、おへその辺りでスネアが鳴るぐらいが丁度良いです。つまりそこが最もパワーが出て一番よくなるポイントです」、そして「自分の手が届くところにタムやシンバルを置き、叩きにくい環境を完全に排除し、セッティングに時間をかけることでドラムの演奏だけに集中できる環境を作ることが大事」と話します。セッティングやリハーサルでの入念な調整やチェックにその姿勢が現れています。

続いて、スティックの握り方や叩き方についての解説では、プレイの95~97%はレギュラーグリップで、レギュラーグリップで叩いた時にパフォーマンスが最大になるようにドラムセットのセッティングをしているとのこと。「スティックコントロールが大事です。いろいろな曲をさまざまなダイナミクスで叩けると表現が広がるのでしっかり練習しましょう」と全ドラマーへアドバイス。


 
 
 

「しっかりと息をすることだよ。」



 
ここで、セッティングがイマイチと語り、チューニングを実践しつつ解説を行うデイヴ氏。観ている側は、演奏を経てドラムセットの鳴りに違和感を覚えたのかと思いきや、デイヴ氏はセッティングやチューニングの解説をする為に、わざと完璧な状態から少しだけ外したセッティングにしていたのです。リハーサルがあっという間に終わった理由が実はここにあったことが分かり、リハーサルに参加した一同は思わず笑ってしまうほどの衝撃です。

応募時に入力された質問は、リハーサル終了後に全てルイス氏が通訳し、その中からデイヴ氏が特に重要と思う内容をイベントの工程に組み込んで解説します。

例えば、タムの表側をチューニングする時は、余計な音が鳴らないように裏側を必ず手でミュートして音を調節する。音感の鍛え方としては簡単で音程差の分かりやすい曲で覚えるといったもの。ドラムペダルは跳ね返りが重要で、自然で楽に跳ね返る位置に調整するといいが、自身はツインペダルがそこまで得意ではないらしく、自分の好きなジャンルに応じて必要な練習をすればいいとアドバイスを送ります。

また、ロックを叩く時はゴーストノートやダイナミクスもあまり付けずにシンプルに叩く。それはジャズドラマーがロックを叩いているというに見えるのが嫌だからでジャンルに応じてプレイも変えると良いという、プロの音楽に対する拘りを感じることができました。

来場者からその場で質問を募ると非常に多くの手が挙がります。一人目の質問「自分のドラムプレイに大きな影響を与えた曲を教えてください」に対しては、「影響を与えてくれた曲はたくさんあるし、それはすごく昔のことだから思い出すのは難しいけど、バディ・リッチやスティーヴ・ガッドなんかはすごくよく聴きました」とのこと。音楽の原点を知ることも大事で、昔の楽曲があるからこその今の音楽がある。いろんな曲を聴こうねとアドバイスを送ります。

次は、「呼吸で気をつけていることや呼吸法を教えてください」というハイレベルな質問。「しっかりと息をすることだよ」と冗談を織り交ぜつつ「これは冗談のようにも聞こえるけど、とても重要なことです。息を止めていると無駄な力が入っている証拠なので、呼吸は常にリラックスした状態で叩けるといいですね」と続けます。

食生活に関しては、ベジタリアンで魚は食べるけど肉はあまり食べず、お酒もほぼ飲まないというストイックさで、高強度な運動ではなく軽いランニングなど自然に体を動かすような運動を日々行っているとのこと。もはやアスリートの領域であるとまで感じます。「ドラムは全身を使うスポーツに近いから、この歳まで続けるにはこれまで話した内容がとても重要です」とデイヴ氏は語ります。

これらのメッセージを熱心にメモを取りながら受ける参加者も大勢詰め掛けた今回のドラムセミナー。世界的なドラマーの、ドラムに対する考え方を知ることができる貴重な時間を過ごしていると実感します。

最後に再び来場者やYamaha Drumsへ感謝を伝え、「最後に1曲演奏させてください」と圧倒的なドラムパフォーマンスを披露。テクニカルなプレイでありながら心地良いグルーヴに、筆者たちも彼のドラムプレイについ見惚れてしまいます。演奏が終わるとこの日一番の大きい拍手と歓声が巻き起こります。

まさに世界トップレベル。テクニックに感化され、自分もドラムを叩いてみたいと思うほど大きな影響を与えてくれる一夜となりました。会場にいた全員が、世界最高峰のドラマーであるプロとしての拘りや信念を、目に焼き付けたことであろうと思います。今後もデイブ氏のご活躍を応援するとともに彼の音楽に対する姿勢を見習って自らも仕事や音楽に活かしたいと思える最高なイベントとなりました。

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