WSRより”もっと”愛を込めて 第22回「フレット考察その7」

前回のコラムで、フレットを抜きと指板の研磨について書きましたが、今回はいよいよフレットを打ち込んでいきます。

フレットの打ちかえはナット交換同様に、加工(処理)のほとんどが機械でなく、人間の手に任せられるため、
クラウンのトップやサイド処理は同じフレットを使っていたとしても、
作業するリペアマンによって大きく異なります。=プレイヤビリティーに大きな違いが出ます。

では、フレット交換の続きを行ってみましょう!

④フレット溝切り

前回の③で指板をすり合わせましたが、多く指板をすり合わせるということはフレット溝の長さが短くなるということになります。
フレット溝の長さが短くなると、フレットのタングが指板に収まりきれずにフレットが浮きます。

また、細いタングのフレットから太いタングを持ったフレットに打ちかえる場合は、ある程度溝の幅を広げてから打たないと、
打ちあがった際に極度に逆反ったネックが出来上がってしまいます。

さらに、フレットが接着材によって固定されていた場合は、フレットを抜くだけでは接着材が除去できずに
フレット浮きやフレットが曲がって入っていきがちです。

よって、フレット溝は指板に対して垂直に打ち込むフレットに対して、適切な深さ・幅を設けなくてはいけません。

1 溝きりノコいろいろ。幅の違いで今のところ5種類。

ここまでの作業でやっとフレットが打ち込める状態になります。

2 フレット打ち込み前の指板

⑤フレット打ち

フレットを打つには従来の「ハンマーで打ち込む」方法と「プレスする」方法がありますが、
今回は「プレスする」やり方で作業を進めていきます。

3 ロール状になったフレット。カットしてあるものより、扱いやすいです。

通常、私たちが使用するフレットはこのようなロール状になっており、
これを適度な長さにカットして打ち込んでいきます。

4 Jawsというフレットプレス。非常に扱いやすいです。

「ハンマーで打ち込む」方法だと、打ち込むフレットは指板RよりもRを小さくして、指板サイドから打ち込んでいく方法を取るので、
フレットが硬くて反発の大きいもの、スタッドが小さくてフレット溝との引っ掛かりが弱いものに関しては
それなりなテクニックと熟練度が必要になりますが、
「プレスする」場合だと、指板Rと同じR、またはほんの少し小さなRをつけるだけでよいので、
要領さえ心得れば比較的スムーズでイージーな作業が可能になります。
ただし、指板のRとプレスする冶具のRがしっかり合っていないと、プレスした後にハンマーでの修正が必要になってきます。

5_2 打ちあがったフレット

⑥サイド処理

打ち上がったフレットは指板サイドから大きく突き出している状態なので、エンドニッパーで指板ぎりぎりまでカットして、
目立てやすりとペーパーを使って、フレットサイドを綺麗にしていきます。

6 エンドニッパーで可能な限りカット

7 目立てヤスリ(左下)で切削

8 パッドにつけたペーパーで研磨

9_2 綺麗なTの字が出ていればOK

ちなみに、ここでの処理は、リペアマンの個性がものすごく良く出るところだと思います。
プレイヤーの方々にとってもここの部分の引っかかりはとっても気になりますよね・・・。

ここの部分の工程はWSRより”もっと”愛を込めて 第19回「フレット考察その4」にて詳しく書いていますので、ご覧いただけるとありがたいです。

⑦フレットすり合わせ

フレットサイドの処理が完了したら、最後にフレットのすり合わせの作業に入ります。

10 上がダイヤモンドのすり板

すり合わせで、綺麗になった指板を金属粉やバフで汚さないようにするという意味で、指板にはマスキングテープを貼って作業します。

ネックがまっすぐであるということをスケールで確認し、ダイヤモンドがついたすり合わせ板で研磨をしていきますが、
フレット打ちの精度が高ければ高いほど、ここでの工程は短い時間で済み、クラウンを余計に擦る必要がなくなります。

また、ネック自体の強度によって特定の部分を多くすり合わせるなど、工夫をすると仕上がった際のコンディションがより良く保てる場合があります。

ダイヤモンドのすりあわせ板の次はペーパーをつけたすり合わせ板を使って、ダイヤモンドの傷を取ってあげるように仕上げていき、
最終的に#600~#800ぐらいまでのペーパーで、1弦から6弦の横方向に研磨してあげると、チョーキングなどでも滑らかな仕上がりになります。

ペーパーの番手を上げても綺麗に仕上げるのには限界があるので、バフを使って最終仕上げを行うとピカピカのフレットになります。

⑧ナット取付・調整

どんなに良いリフレットが行えたとしても、ナットの取付・Set upが上手く出来ないと、楽器としてのポテンシャルは下がってしまいます。
この2つの作業は最後の最後でとても重要な工程といえますね・・・。

11 完成!!

・・・という感じで2ヶ月に渡ってリフレットについてざっと書いてきましたが、いかがだったでしょうか?
普段、何気なく進んでいく作業も書いてみると結構、工程が多いものですね・・・。

来月は「フレット考察その8」です!!