WSRより”もっと”愛を込めて 第21回「フレット考察その6」

皆さん、あけましておめでとうございます!!WSR額田です。

ホームページのリニューアルに伴って復活した私のコラムも今回で4回目となりました。
本年も更新を怠らないように頑張りますので、引き続きご愛顧の方宜しくお願いします。

さて、今回は実際のリフレットはどのような工程で行われているのかを説明していきたいと思います。

サンプルとして登場するのは私が10年ほど前にJ/D #6105にリフレットをしたエボニー指板のParformanceのSTです。
もう10年も弾き続けたので、クラウンの凹凸が激しくなってしまったのと、オーナー様のご希望で
もう少し低いフレットを使いたいということで、DiMarzioの1600Uというフレットに打ちかえることになりました。

1 激しいフレットの凹凸と指板には手垢がびっしり(笑)。

①状態を確認する

当然のことですが、弦を張ってチューニングをして、現在ネックがどのような状態にあるのかを確認します。

ネックが順ぞりなのか、逆ぞりなのか、それはトラスロッドで修正可能な範囲なのか?
また、トラスロッドの回ししろ・・・正巻き・逆巻きにどれくらい回せるのか?
ハイハネは発生しているのかいないのか?

出来るだけ多くの情報を集めておく事がこの工程でのポイントになります。

②フレットを抜く

弦を外して、ネック・ペグを外します。

この時にフレット・指板を軽く叩き、音の違いを聞き比べると①の時に目で見て判断できなかった
指板剥がれやポジションマーク浮きなどが分かります。ちなみに剥がれている場合はしっかりと接着されている
「コンコン」という音に対して「ポクポク」(笑)した感じの音になるので、その場合はそれなりの対処が必要になってきます。

近年の楽器はフレットが単純に指板に打ち込まれているだけでなく、瞬間接着剤・エポキシなどで接着されているものが大変多いです。
そのまま抜こうとすると、フレット周辺の指板がチップしてしまうか、ごっそり剥がれてしまう可能性があるので、
半田ごてを使ってフレットを暖め、接着剤を熱で柔らかくしてからフレットが冷えてしまわないうちに抜くと綺麗に抜けます。

メーカーによってはフレットのスタッドを木部に食い込ませずに接着のみでフレットを固定している場合もあり、
この工程によって「にゅーっ」とフレットに柔らかくなった接着剤がこびりついてきます。

フレットを抜くにはエンドニッパーの底面を平らにして、挟むだけでフレットが上方向に滑りあがっていくように加工したものを使います。
よって、作業としては「引っこ抜く」という感覚よりはニッパーの取っ手を「開いたり閉じたりする」という感覚です。

2 加工されたエンドニッパーと抜かれていくフレット

③指板をすり合わせる

フレットを抜かれたネックは指板の硬度やフレットのスタッドの食い込み具合によっても変わってきますが、少し順ぞり方向に動くので、
トラスロッドでネックを調整し、スケールを当ててネックのストレートを確認します。
大抵、長く弾き込まれた楽器はこの状態でのストレートは残念ながら、ほぼ出ません・・・。
ハイハネ・波うち・ねじれなど、さまざまな症状がありますがそういった場合、ネックをどの状態にして指板をすり合わせればよいのか?
というのはリペアマンの経験にゆだねられるところが大きいと思います。

3 Precision Straightedge。歪まないように分厚く作られているスケール。

トラスロッドを回して適正な状態にセットしたネックをすり合わせ板ですり合わせます。
指板の材質によって異なりますが、#150から#600番ぐらいまで番手を上げて、研磨傷を取りながら指板のストレートを出していきます。

4 もち手がついたすり合わせ板。非常に使いやすいです。

すり合わせの際、縦方向(1フレットから22フレット方向)はスケールにて確認しながら行っていけば、
それほど難しい作業ではありませんが、
フレットを打ち込んだ際にネックは必ず逆ぞりに方向に動くので、指板のすり合わせが完了した時点では
ネックを順ぞりさせることが出来るようにしなくてはなりません。

また、横方向(1弦から6弦方向)ではRadius Gaugeで確認しながら、元の指板Rを崩さずに擦っていくテクニックが必要になってきます。

5 Radius Gaugeこれも非常に便利なツール。

こうした工程を経て、やっとフレットが打てる段階に近づいていきます・・・。


次回は「フレット考察その7」 今回の続きでフレットを打ちます!!